ノルウェイの作家ヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』は「哲学史ファンタジー」という耳なれないスタイルの哲学入門書です。
子供向けでもありますが、一般書としても世界中で人気の一冊です。
今回はこの一風変わった哲学入門書を紹介してみます。
引き込まれるストーリーに難解な哲学を乗せてわかりやすく
初学者がぶつかる哲学入門書の壁
一般的に哲学入門書を初めて読む人がぶつかる壁があります。
一つが難解すぎてついていけなくなること。
プラトン、デカルトあたりまでは理解できても、カントあたりで力尽きる初学者が少なくありません。
もう一つがそもそも哲学史のボリュームが大きすぎて読み通せないこと。
その入門書でどの哲学者が取り上げられるかは著者の裁量次第です。
本当に重要な哲学者だけを取り上げている入門書もありますし、細かいところも詳細に解説している入門書もあります。
哲学は前の時代の哲学者の影響を受けて自分の主張をつくりあげています。取り上げられる哲学者が少なすぎると、その思想が誰の影響から来ているのかわからないこともあります。
逆にたくさんの哲学者を取り上げてしまうと、入門書としては似つかわしくないボリュームになってしまい読了率はかなり下がってしまうでしょう。
『ソフィーの世界』が初学者に向いている理由
- 難解すぎる
- 読み通せない
この二つの問題を解決した入門書が『ソフィーの世界』です。
『ソフィーの世界』はソフィーという14歳の少女が正体不明の哲学の先生から哲学を習うという物語形式の入門書です。
そのため、解説文は中学生でもわかるくらい平易な文章です。
『嫌われる勇気』を読んだときにも思いましたが、対話形式だと頭にスッと入ってきやすいんですよね。
また、『ソフィーの世界』で取り上げられる哲学者はその他の入門書と比べてもかなり多いです。
巻末の人名索引を見ると約130名の名前がありました。この中には荘子やブッダなどの東洋哲学者から、ドストエフスキーやゲーテなどの小説家、チャールズ・ダーウィンやガリレオ・ガリレイなどの自然科学者の名前も含まれます。
哲学だけに収まらず、芸術や自然科学に知識も多く紹介されていますが、どの時代にも根底には哲学の思想が流れていたということがよくわかります。
ここまで広範な領域を扱うとなると、かなりのボリュームになります。実際、あとがきまで含めると本書は662ページという分量です。
入門書ではあり得ないくらいのボリュームです。でも、食い入るように読めてしまうです。
説明がわかりやすいということもありますが、それ以上に物語のストーリーがとても面白いんです。冒頭で「ファンタジー哲学史」だと紹介しましたが、本当に続きが気になってどんどんページをめくってしまいます。
訳者あとがきで「ラッセルの『西欧哲学史』とL・キャロルの『不思議の国のアリス』を足して二で割ったようなもの」と表現されていましたが、まさにその通りだと思います。
まとめ
本当は物語の内容も紹介したかったのですが、どうしてもネタバレになってしまうので、今回は『ソフィーの世界』の魅力だけを紹介しました。
本編はぜひ手にとって読んでみてください!楽しみながら一気に読めるはずです。
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